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現実逃避としての海



 ぼくは若い頃から海が好きでした。
 広くて、明るくて、楽しくて、自由で、ノビノビゆったりできるところ、それがぼくの海のイメージです。
 ぼくが小さい頃は、若いお姉さん達が、南の島のリゾートに旅行に行くのが流行っていて、CMで流れている珊瑚礁の白い砂と、透明度の高い海と、白亜の豪華なホテルというステレオタイプなイメージが、夢の国のように思えました。
 それが理由かわかりませんが、夢の国・楽園という言葉から、ぼくが連想するのは南の島の海辺です。
 海好きが昂じて、海辺の田舎町に引っ越してしまいました。休みの日には、スキューバダイビング・シーカヤック・サーフィンなどを楽しんでいます。
 そんなぼくですから、ときどき「なぜここまで海が好きなのか」って考えたりします。
 理由は先ほどのように、海が楽しくて居心地がいいからですが、もっと先の理由を考えると、「現実逃避」「人嫌い」という言葉が頭をよぎるのです。
 楽園の話しを先に書きましたが、古来、人は楽園の存在を夢見ていたようです。中国からは桃源郷のイメージが伝わってきましたし、昔話では竜宮城が出てきますし、沖縄ではニライカナイのイメージが共有されていますし、日本の仏教では補陀落渡海が行われていました。
 これらの背後に感じられるのは、海の向こうに(あるいはどこか遠くに)、この場所の辛い暮らしとは違った、とても楽しく暮らせる場所があるのではないか?というメタファーです。
 これって今の辛い暮らしを乗り切るための現実逃避、あるいは気休めなんじゃないのかなあ、とぼくは思うのです。ぼくがそう思うのは、ぼくが海に居たいのは、日々の責任や雑務や人付き合いからしばし開放される場所だからです。ぼくが海を現実逃避の場所としているから、楽園的なイメージをそのように解釈してしまうのかもしれません。
 ぼくは大学生の頃に湘南でサーフィンを始め、東伊豆でスキューバダイビングを始めました。以後、今まで続いています。
 大学卒業後サラリーマンになって、平日に忙しく辛い仕事をこなし、土日は、海でやっと自分らしくいられるという日々を送ってきました。
 やがて結婚し、子供が生まれました。それは幸せなことでありながら、責任を負うことでもあります。人生のそんな時期にも、ときどき1人で海に行くことは、ぼくにとって大切な時間でした。
 ぼくは自分の中で、社会人の大人としての役割を果たす一方で、そこから離れた本来の自分に戻る場所として海を希求していたのです。海にいる時間がなければ、ぼくはどこかで破綻していたんじゃないかと思うのです。ぼくが「海が好き」というときには、自分の存在のバランスを保つためになくてはならないものという意味が含まれています。
 そういう自分らしくなれる趣味や場所や時間みたいなものを、誰でも持っているのかもしれません。
 ちなみにぼくは山本周五郎の『樅ノ木は残った』が好きで何度も読み返してしまいます。主人公の原田は、普段は家老としての務めを果たし、自分の秘めた志を隠して、信頼されるバランスのとれた人を演じます。その原田が、ときどき山小屋に籠もって狩りに没頭するのですが、その2面性に共感してしまいます。
 ここまでの話しには、社会で生きる上での役割を務めなければいけないということと、自分らしさをどこかで実現するという構造があるわけですが、仮にぼくに海という場がなければ、ぼくも楽園を日々夢見ていたかもしれません。あるいは今の解放される場所としての海以上に幸せに居られる場所としての楽園としての海が、もしかしたらあるかもしれない、いつかはそこに行けるかもしれない。そんな風にも思ったりします。








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