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人口の少ない離島の旅が好きです



 離島好きです。
 ぼくがリアルタイムで知っているわけではないですが、昔、離島ブームというのがあったそうです。1970年代の頃から続いていたようです。
 ぼくの記憶の隅にあるのは、新島に若者が大挙して行っていたとか、与論島ツアーがやたらテレビCMで流れていたということです。

 実際、リアルタイムでぼくが島に行くようになったのは沖縄本島、石垣、宮古、伊豆大島、八丈島です。目的はスキューバーダイビング。
 そしてだんだんより人口が少ない離島に行くようなりました。

 多良間、西表、御蔵、小笠原父島、母島…

 行くのに時間がかかる人口の少ない島には独特の魅力があります。一方で手軽に行ける島は都会化してしまって少し残念です。旅行者のエゴ丸出しで恥ずかしいのですが…
 都会化してしまうというのは、いいたいことを正確にいっていない気がします。そうですねえ、島にいる客層が軟弱でチャラくなっていて、そういうお客を扱うために島の人もそれっぽくなっているのが残念という方がいいかもしれません。

 たとえば母島にいる旅行者と沖縄本島にいる観光客では、客層がかなり違います。前者は、自然とかツーリズムに対して気合いが入っているのに対し、後者は、ただの観光客です。
 たとえば沖縄本島や石垣島や八丈島は、東京から飛行機で1~3時間で行けます。3日休みがあれば、まあ楽しめます。それだけ手軽なんですが、そうすると島の感じというのは町とそんなに変わらない、ってやっぱり変わりますが、昔の石垣はもっとノンビリしていました。
 一方で小笠原の父島は東京の竹芝から船でしか行けませんし、船に乗っている時間は25時間です。そしてその船は通常1週間に1便しか出ないのです。つまり、6日間ないと父島には行って帰れないというわけです。さらに母島は父島から船で2時間かかります。
 これでは旅行者の層が違ってもしょうがないでしょう。

 それに人口の少ない島のよさというのは2、3日も滞在していると顔を覚えてもらえて、まあ、たいていみなさん優しいわけです。そこにずっと暮らすとなるとそれはそれでいろいろ煩わしいこともあると思うんですが、旅行している分にはその親密な感じは居心地がいいんですね。
 ぼくのこれまでの経験からいって、アットホームな感じが体験できるのは、人口が3000人以下で、できれば空港がない島です。それくらいだと、郵便局1つ、JAが1つ、雑貨屋みたいな商店が2つか3つ、飲み屋が数軒というのが相場でして、3日もいれば、同じ店に何度も行くし、島のメインストリート(って数百メートルの小径だったりしますが)を何往復もしているわけで、当然、島の人とも顔を合わせるし、挨拶するようになるし、そうなるとだんだんいろいろな話をするようになって、夜は飲みに誘われたりしてって、そういうのが楽しいんですね。

 そういうんじゃなくて、リゾートホテルに滞在して、プールで泳いで、エステやって、ホテルのバーで飲んで、後から考えると島の全体像はよくわからなくて、島のビーチに一歩も足を踏み入れなかった、足が汚れなくて潮臭くならないそんな旅が好き、という人もいると思うんですが、それはそれでいいと思いますが、ぼくはそういう人とは仲良くなれないと思います。

 人口が少なくて、空港がない島には、一種独特の閉塞感があって、それは守られ感というか、今、島にいる人の全容がだいたいみんな把握できている感じがあります。それは一方で匿名性がなくなるわけですが、そのメリットとデメリットは都会のマンションで暮らしているのと正反対に表れてくる気がします。
 都会のマンションで暮らしていると、隣の人が誰なのか、同じフロアの人がどういう人なのかわかりません。マンションのゴミ捨て場にルールを破ってゴミを捨ててもわかりません。自分が多少だらしがないことをやってもわからないという、悪い意味での自由さと無責任さがあります。そして一方で、すごく過密に人が住んでいるのに孤独を感じるということもあります。極端なケースでいえば、よくニュースで行方不明の人の遺体が山林で発見されたなんてことがあるわけですが、それって人が一人くらいいなくなっても誰も気にしない状況があるということなのかもしれません。

 人口が少ない島の特徴はそれと正反対です。
 誰がいつ何をやっているかはなんとなくわかる、だから各自はコミュニティのルールをきちんと守る。一方で誰かが困っていればすぐにわかるので、すぐに助ける。誰かが不意にいなくなるなんてことは考えられないわけです。
 そんな島では、家に鍵をかける人はいないし、車もキーはさしっぱなしだし、何か足りない道具があれば近所の人に貸してもらうし、収穫で人手が足りなければ手伝ってもらうということなのでしょう。
 ぼくはそういう中にいた方が安らげます。気持ちが楽になります。それはもしかしたら自分が歳をとったせいかもしれません。あるいはもともと自分の中にそういう性質があるのかもしれません。海辺の田舎町に住んでいるくらいですから…
 なかなか時間がないんですが、年に1度くらいはそんな離島の旅をしたいなあと思います。











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