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東京近郊の海を見たカルチャーショック



 ぼくが上京して関東近辺の海辺で遊び始めたのは大学生の頃。年代でいえば1990年代前半でした。
 上京して驚いたのは、東京の街が大きいことももちろんですが、相模湾沿岸の海の様子でした。ぼくの故郷に海はありましたが、それは漁村だったり、観光地だったり、港湾だったり、コンビナートといったものでした。どれもこれも産業に欠かせない施設で、一般人が普段は立ち入らない場所です。そのため海は少し遠い存在だったんです。
 ところが東京近郊のいわゆる湘南のような海は、住宅地であり、お店もあり、マリーナがあり、いわゆる生活と遊びの場でした。
 その海と暮らしの近さ、そして漁業関係や観光関係が仕事でなくても海辺に住むことができるという点に衝撃を受けたのを覚えています。
 また、ヨットやクルーザーやダイビングやサーフィンなどの海遊びをする人が大勢いるという豊かさにも驚きました。
 物心ついた頃から海が好きだったので、そうした海と暮らしの関係にすごく惹かれていったのです。
 当時、貧乏大学生だったので、お金はありませんでしたが、海辺のカフェやレストランに行ったり、鵠沼でボードをレンタルしてサーフィンしたりしていました。
 東京のどんより曇った狭い空のもとでの暮らしで息がつまりそうになると、電車で逗子・鎌倉・鵠沼・辻堂・茅ヶ崎・大磯・小田原といった相模湾あたりの海に行きました。一日海にいると不思議に気持ちがスッキリしました。
 相模湾だけでなく外房や鹿島灘にも行きました。
 ぼくの海遊び遍歴は、サーフィン→スキューバーダイビング→セイリング→シーカヤックという具合に増えていき、今は全部をやっているんですが、それぞれの局面ごとによく行く海は変わっていきました。
 サーフィンを熱心にやっていた頃は、湘南や外房や大洗に行きましたし、スキューバーダイビングにハマっていた頃は、伊豆や八丈島・三宅島に行くようになりました。セイリングは油壺と葉山が多いですし、シーカヤックは三浦半島や西伊豆がメインです。
 それぞれの海によさがあってどこも好きです。ただ年齢と共に好みが変わってきたような気が…
 若い頃は、茅ヶ崎・鵠沼・東浪見・一宮のような広い砂浜が好きだったんですが、だんだん油壺・葉山・伊豆のような山が迫った海が好きになってきたんです。それは海遊びによって変わっていく面もありますが、なんとなくリラックスできる海が変わってきたというのもあります。不思議なものですね。
 だいぶオジサンとなった今では、上京した頃のような、お店がたくさんあって、人が大勢住んでいる賑わった海辺よりは、ノンビリした漁村がいいと感じるようになりました。自分の好みの変化を思うと、過ぎた年月や経験してきたことをしみじみ思い返してしまいます。
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