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社会という複雑さから、少し距離を置くために…



 ウォータースポーツが好きで、海辺に日がな一日いるのが好きです。
 潮風に吹かれて、波の音を聴きながら、ボーッとしていると、あっという間に時間が経ってしまいます。
 仕事上の知り合いで、休みが1週間もあると時間を持てあましてツライという人がいたりしますが、ぼくにはそういう気持ちはわかりません。1週間だろうが2週間だろうが、やることがたくさんあって時間をもてあますことはありません。
 先日テレビを見ていたら、大学3年生が「就活を頑張ります、やるぞー」みたいなことをやっていましたが、たいへんだなーと思います。えらいなーとも思います。ぼくが大学生の頃は就職活動というのは、イヤだけどしょーがないからやるかという感じでした。友達で実家が豊かで、別に無理して働かなくてもいいというヤツがいましたが、マジメに羨ましかったです。
 働いて、税金を納め、選挙に行き、パートナーを探し、結婚し、子供を産み・育て、親の介護をする…ということで、一人前の社会人として振る舞うのは、ぼく的には「めんどくさい」のでした。
 人によっては、貯金をしたり、流行の服を着たり、見栄えのいいマンションに住んだり、高級車に乗ったり、浮気をしたり、いろいろ熱心にやっている方もいるようですが、そのマメさに感心してしまうぼくなのでした。
 いい歳した男が引きこもりで、親の年金で暮らしていますみたいなドキュメンタリーをやっていますが、他人事ではありません。ぼくももう少しやる気がないタイプに生まれていたら、あるいはちょっとした育てられ方の違いで、そんな風になっていたかもしれません。もともとぼくはだらしのない、やる気のない人間なのだと思います。
 ウォータースポーツをしていると、海というのは一応ルールがありますが、それは死なないための最低限のルールです。ウォータースポーツをするときに考えているのは、いかに死なずに楽しむかだけでして、一人前の社会人として振る舞うためにやらなければいけないことの1000分の1くらいしかやることがありません。とてもシンプルです。たぶんぼくはそういうシンプルさと、そのシンプルさからくるであろう自由さが好きなんだと思います。
 沖縄の離島に行くと、島のオジサンは、日中はサトウキビを刈ったり、漁に出たりしますが、後はテレビを見ながら酒を飲んでいます。年中、Tシャツ・短パン・ビーサンです。そういう温暖な海辺がもたらすであろう暮らし方も好きです。たぶん生きるために必要なこと以外がほとんどないから、ぼくは好きだと感じるんだと思います。
 生きるということは、もともとは今日一日健康で食べていけるかということでいいはずですが、社会に出るとか、社会で周りの人と比べてどうとか、自分達でいろいろと複雑にしちゃって、よけいに面倒にしちゃっているんじゃないかなあと思います。
 海辺で暮らすというのは、多少なりともそういった複雑さから遠ざかるひとつの手段なのかもしれません。




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