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地理、地点間の移動は大きな意味を持つのではないかとの思い




 ぼくはン十年前に都心から郊外の海辺の田舎町に移り住みました。
 これはいろいろ迷いや思い切りが必要でした。
 一番の問題は通勤時間でした。
 片道2時間弱の通勤時間をどう考えるか…
 それまでの生活は週末は早起きして道路が混む前に海辺に移動して、ウォータースポーツを楽しんで、宿で1泊して日曜日の夜遅く、渋滞が解消してから自宅に帰って、翌朝出勤するというものでした。
 自宅から職場までは地下鉄で20分ほどでしたが、すごく混雑していて、乗れないで何本かやり過ごすような生活でした。
 郊外に住めば、通勤時間は2時間ですが、満員電車とは関係ありません。始発で必ず座れるとわかっていましたから…
 そして毎日海を感じられる、あるいはアサイチ(早朝にサーフィンすること)だってできる。
 そのどちらを選択するかです。
 おそらくぼくのような海バカは、いずれ海辺に移住したのだと思います。だから結果は、「移住に満足している」というものになるのは初めから決まっていたのでした。
 ただ移住してみて、当初予想していなかった良いことがありました。
 いろいろありますが、一番大きいのは、職場と物理的に距離が離れることで、気持ちが切り替わる効果です。
 これはどなたでも経験されていることではないかと思います。
 たとえば旅行はその最たるものではないでしょうか。
 移動すること、日常の暮らしから距離的に離れることで、気持ちが切り替わる。あるいは日常の暮らしとまったく違う土地に移ることで気持ちが切り替わる。そういったことは経験的にあるのではないでしょうか。
 ぼくが海辺の町に移住して感じたのはこのことです。
 職場の近くに住んでいた頃は、終電までに帰ればいいやとか、いざとなればタクシーで帰ればいいや、あるいは仕事で何か起きれば夜中でも駆けつけなければならないとか、仕事がすごく立て込めば休日に出勤すればいいや、みたいな気持ちが心の奥にあったんじゃないかと思います。それが心理的には仕事からずっと離れられないような状況を作っていたんではないでしょうか。
 こんな心理的な作用はかなりぼくの個人的な性格によるものかもしれません。そんな心理になるのは、ぼくが、仕事も好きで一生懸命やりたいという気持ちもありつつ、学生時代からずっと海が好きで、ウォータースポーツを続けてきて、もし仮にウォータースポーツで食べていければ、それもいいなあと思った若い頃もあったという両面が、ぼくの気持ちの中に確かにあるからかもしれません。
 ただ、今思えばン十年前に郊外に移り住むという決断をしていなかったら、ぼくは過労でココロが病んでいたかもしれないなあと、たまに思います。
 そんなわけで今は、職場から電車に乗って、あるエリアを過ぎると気持ちが完全にプライベートモードに切り替わります。
 スイッチがパチンとオフになります。
 もう職場から緊急の電話がかかってきても、もういけないもんね、と思います。
 ここからは海の男の自分だもんね、と思います。
 職場の○○さんじゃなくて、海辺の○○さんであり、父や夫としての○○さんだもんね、と思うのです。
 ぼくは自分の気持ちの中にある、仕事も大事、海辺の暮らしも大事、という2つの気持ちを、距離の移動によって切り替えているのかもしれません。
 もし、これを読まれている方が、ぼくのような心理状況で、海好きであるならば、移住することをオススメします。





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